大人になれば
人生のテーマソングがひとりひとりにあるならば、私のテーマソングは小沢健二の“大人になれば”かもしれない。
いい事があってもイヤな事があっても、私はたいてい歩きたくなる。
そんな時この曲を聴くと、本当にどこまでも歩いて行けそうな気がする。
デザイナーの皆川明さんは御自分の人生を「口笛を吹きながら疾走している感じ」と仰った。
私の場合はこの曲の速度が丁度いいらしい。
軽快なピアノの音色に乗って流れるフレーズは、甘い恋の詩にも聴こえるが、ブルースとかメランコリーとか、なかなか暗い語もちらほら。
その中でいつもドキッとしてしまう箇所がある。
「草原より速く吹いてくる夜風 岩に立ち闇を見てるよライオン」
唐突に出て来るこの歌詞は、一体何なのか。
このライオンは一体何者なのか。
頭の中には、黄金色の立派な鬣を夜風に靡かせ佇むライオンの姿が、くっきりと見えてくる。
ライオンは、そのまま漆黒の闇へと入って行くのだろうか。
それとも振返り、朝日の方へと向かうのだろうか。
きっと彼は光も闇も知ったのだ。
そうして、どちらにも留まらず、どちらも感じながら、広い草原をどこまでも駈けて行くのだろう。
それが生きる事、と言うように。
またピアノのイントロが鳴り出した。
さあ、歩こう。
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