宝石箱

国立新美術館で野口里佳さんの「飛ぶ夢を見た2」という作品を観て、「宝石箱」というアイスがあった事を思い出した。

それは、バニラアイスの中に赤、緑、黄色の宝石のような氷の粒々が散りばめられた、夢のようなアイスだった。

暗闇に妖しく光る一粒の宝石。

黒地のパッケージもアイスらしからぬ大人っぽさで、容易に手が出せない高貴さが漂っていた。

実際値段も高くて、なかなか食べる機会はなかったけれど、とにかく異彩を放つ存在だった。

「宝石箱」が発売になった同じ年、YMOが結成、ザ・ベストテンが始まる。

私はブラウン管に映る濃いアイシャドウのジュリーに、衝撃を受けた記憶がある。

その後、「いけないルージュマジック」なんていう凄い二人の凄いパフォーマンスも。

アニメは、ガンダムや未来少年コナン、銀河鉄道999など。

あの頃、人々は今より未来や宇宙に思いを馳せていたのだろうか。

今だってそれは人々の大きな関心事であるだろうが、あの頃、それはもう少しアナログで、ポップで、キラキラしていた。

人々は未知のものを宝探しできた。

どきどきしたり、わくわくしたり、ロマンを口ずさんで。

いつかまたあんな「宝石箱」に出会える事があるだろうか。

在ったとしても、浦島太郎の「玉手箱」になってしまうだろうか。

開けてしまった「パンドラの箱」なら、ひょっとして何処かにあるかもしれない。

それなら私はその箱を探してみたい。

箱に残った最後のひとつを見つけるために。