此岸と彼岸を結ぶ色

東京都現代美術館で観たレベッカ・ホルンの作品の中に、印象的な色が在った。

私が見た彼女自身も、ほんの少しアクセントとしてその色を身に付けていた。

レオナール藤田の生んだ肌の色や、夜空に輝く月の色を乳白色と言うならば、その色は乳青色とでも言うのだろうか。

海から波のアーチが生まれ、白い泡となって岸へ打ち寄せるその一瞬、その色は姿を現す。

そう、それから皮膚に透ける血管の色。

モディリアーニの女性像の瞳にもその色を見つけた。

アーモンド型のその瞳には、一体何が映っていたのだろう。

彼女はそこにいて、そこにはいない。

水平線を撮った或る写真集の表紙の空と水面にも、その色は漂っていた。

それは記憶の予感だったのかもしれない。

その色は恐れや哀しみ、狂気さえもシルクのように滑らかな薄い膜で覆ってしまう。

そこにはもう境界線はない。

ただ静寂だけが在る。

その色は境界という時空から迷い込んだ色か。

はたまた、此岸と彼岸を結ぶ色か・・・。